ノーゲーム・ノーライフ ゼロ

8/3にノーゲーム・ノーライフ ゼロを観てきた。

ノゲノラ自体は2014年のテレビシリーズで知って、それ以来原作小説を追い続けていて、その6巻であるところの過去編がこのたび映像化ということで、原作の感想も混ぜつつ思ったところを。

 

映画全体としては、テレビシリーズとは真逆とも言える禍々しい描写が印象的。これは監督のいしづかあつこさんもかなり意識して本編との差別化を図っていたみたい。キービジュのボロボロになったシュヴィちゃんが空を見上げている絵が、絶望しているけど希望を捨てていないという彼女の最期を、荒廃した世界と瞳の輝きとの対比で絶妙に表現していると思う。

 

そういえばこの子は変わった後の世界を知らないんだな...そう思うとまた泣きそうだ...

 

機凱種(エクスマキナ)っていうのがヒロイン・シュヴィちゃんの種族なんだけど、これがまた演出がいちいちかっこいいんだ。戦うときにガシャンガシャンって兵器を展開するシーンとか、指揮体への通信シーンとか。終盤の、この子の種族の仲間が総員で展開するシーンとか。かっこいい。

 

でもやっぱりこの映画というか、この最も旧き神話で私の心を掴んで離さないのが、リクとシュヴィという夫婦の関係なんです。主人公で人間であるリクはヒロインのシュヴィに故郷を破壊されているのに、それも折り込んでシュヴィを愛していて、で、ほんとにめちゃくちゃ愛してるっていうのがすごく繊細かつ強烈に表現されてた。

人類種と機凱種では子供を作れないばかりか、機凱種には穴も棒もないので生殖行為の真似事もできなくて、リクは最期に一番の後悔として「おまえを抱きたかったよシュヴィ」って言うシーンがあるんだけど(劇場版ではカットされています)、これが正直めちゃくちゃ効いてるんだよな…

この作品中で下ネタは当然のように幅を効かせてて、「童貞」ってワードも冗談というかボケの一貫としてよく出現するんですよね。そんな作品中で、共に戦い、死んでしまった妻を、彼女の遺した布石を以てして目的を達成し今にも死なんとする男が、最後の最後で「抱きたかった」と言って死ぬ。下ネタでなく愛情表現としての性行為であって、シュヴィをいかにめちゃくちゃ愛しているかというのが痛いくらい伝わってくるところです。あれ、映画の感想は...

ああでも、リクが眠りにつく時にシュヴィに声をかけるシーンでの松岡の演技はよかったです。

 

めっちゃ演技がすごかったのはかやのんで、ジブリールにやられる!ってときに連結解除された連結体に自分のデータの同期を依頼するところの切羽詰まり感というか、泣きながら駄々こねてる感じが、声優の本気を見せられたというか。島村さんの泣きに通じるものがありますね。あそこだけのためでも見にいく価値があるんじゃないかなってくらい。かやのんも演じながら泣いたらしいし。

シュヴィもやっぱりめちゃくちゃリクを愛してて、避けられる攻撃を、リクに貰った指輪を守るために急所に受けたり、最後の体が消し飛ぶほどの攻撃を受ける直前に最後の力で局所的なバリアを張って指輪だけ守り抜いたりするんですよ。もう無理。

かやのんといえば冒頭の「おにいちゃん、もうがまんできない、わたしをおんなにして(棒)」もSiriっぽくて最高でした。

 

とりあえずパッと書けるのはこれぐらいかな。まだまだ多分いろいろ思うところはあるんだけど、いちばん言いたいのはいろんな人に見てほしい。そして原作を読んでもう一度観てほしい。映像はもちろんとてもよくできていて、単体でも十分楽しめる作品だと思うけど、原作でなされている心理描写だったりを踏まえた上で観るとさらに楽しめるし、涙が止まらなくなる。私ははじめから分かっていたのでタオル持っていきました。来世ではふたり幸せに生きてほしい......そのためにもはやく空白は結ばれるべき。

 

円盤買います。